コラム:🌞『猛暑の常態化』に備えた「ひんやり」「しっかり」の熱中症対策 🌞
従来の感覚を改める必要性
今年も暑い夏がやって来ました。気象庁によると2024年の夏(6~8月)の平均気温は東日本で平年差+1.7 ℃、西日本で+1.4 ℃となり、観測以来の最高記録を更新しました。全国153地点のうち半数超の80地点で「史上最も暑い夏」を観測したことは、もはや局地的な現象ではないことを物語っています。2023年夏も+1.76 ℃で歴代1位タイでしたので、2年連続の記録更新は“例外”ではなく、“新たな基準”と捉えるべきかもしれません。
消防庁の集計によると、2024年5~9月に熱中症で救急搬送された人は9万7,578人と過去最多。前年より6.7%増え、搬送者の約半数が65歳以上というデータが示す通り、高齢者への影響は非常に大きいようです。しかも“危険な暑さ”の幕開けは年々早まり、今年は6月16~22日の1週間だけで既に8,603人が搬送されており、早くから警戒レベルに達する現実は、従来の感覚を改めなければならないようです。
◆小さな習慣で「しっかり」水分補給
1日にとりたい水分の目安は体重1㎏あたり30 mL(体重50 ㎏なら約1.5 L)。コップ1杯200 mLとして、起床後、朝昼夕の食事、入浴の前後、就寝前に1杯ずつ飲めば、無理なく目標を達成できます。
麦茶や水に加え、汗で失われる塩分を補える経口補水液や薄めのスポーツドリンクを常備しておくと安心。甘い飲み物を控えたいときは、梅干しや塩昆布をつまみに水を飲む方法もおすすめです。
◆お部屋を「ひんやり」快適に
室温は28 ℃以下、湿度は50〜60%が目安。エアコンの風が苦手な方は、扇風機を壁に当てて柔らかな風を回しましょう。首や脇など太い血管が通る部位に保冷剤を当てると体温が効率よく下がります。凍らせたペットボトルをタオルでくるんで抱えるだけでも効果があります。
◆“ひと言”が支えになる
喉の渇きを感じにくい利用者さまには、「今は水分タイムですよ」「お薬と一緒にお水をどうぞ」と具体的に声をかけてみてください。トイレに尿の色見本を貼り、色が濃いときは「次はお水を飲んでからトイレに行きましょう」と伝えると、ご本人も脱水に気づきやすくなります。
◆食事からも涼と水分を
きゅうり、トマト、スイカは90%以上が水分。刻み食やゼリー寄せにすれば嚥下機能が弱い方でも安心して食べられます。冷たい茶わん蒸しは口当たりがよく、出汁の塩分も補給できます。そうめんや冷やしうどんに野菜を加えると、水分と栄養を同時にとれ、季節感も楽しめます。
◆夜間の油断が翌日のリスクに
熱帯夜が増え、夜でも熱がこもりがちです。就寝前にコップ1杯の水を飲み、エアコンは28 ℃を目安に弱運転を。扇風機の微風を壁に当てて空気を動かすだけでも寝苦しさは軽減します。夜の脱水を防ぐことが翌朝の体調に影響します。

「ひんやり」と「しっかり」の両立は、小さな工夫の積み重ねです。互いの声掛けが暑い夏を安全に乗り越える力になりますので、熱中症警戒アラートの有無に関わらず、施設全体で“いつでも水分補給”を合言葉に、油断なき夏を過ごしましょう。